2年ほど前にリリースされたトム・ヴァーレインのソロです。
前作『Wonder』から15年ほどのブランクがありましたが、あの声とギターは健在でした。
私は彼の大ファンですし、もう何も言うことはありません(笑)。
この『Songs And Other Things』、インストで幕を開け、歌物を挟んで最後もインストで幕を閉じます(※最後15曲目にノンタイトルのインスト隠しトラックがあり、これも名品)。
実は、同アルバムと同時期に『Around』というインストアルバムもリリースしておりますが、こちらも『Warm And Cool』以来の意欲作で味わい深いのですが、それはまた別の機会に改めます。
彼のソロアルバムも1stから順にご紹介しようとは思っていたのですが、テレヴィジョンの3rdや『Flash Light』、『Cover』の頃のトムの声とサウンドに若干の違和感を覚えていたので、この『Songs And Other Things』での復活ぶりがめちゃくちゃ嬉しかったですね。
前作『Wonder』にも好きな曲がいくつかありましたが、それでも1st、2ndのタイトな感じ、3rd(※とりわけタイトル曲の「Words From The Front」のギタープレイは最高)の情念みたいなものにはかなわないなぁ、と思ってました。
『Songs And Other Things』は、テレヴィジョン期の名品「Little Johnny Jewel」から、彼自身がボウイのフェイヴァリットに掲げる『ロウ』へのアプローチを感じさせた『Warm And Cool』のインストへの挑戦までの全ての試みをこの1枚に凝縮してみせたまさに達人の味を感じますね。
勿論、5曲目「From Her Fingers」あたりから終盤にかけてたたみかける怒涛の歌物(笑)も、カッコいいです。。。個人的には「Shingaling」あたりのドラムとの絡み、メロディなんかはたまらなく好きですね。
塗り潰すギターではなくて、編み上げるギター。
音の隙間をも最大限に活かした、空間を登りつめるようなギタープレイは相変わらず輝きを放っています。
よくよく振り返ってみると――殆どギターのみのサウンドプロダクションで勝負してきたアーティストとして、トムはまさにそうした数少ない一人だと思います。
90年代に見た彼の美しいブルーのフェンダー・ジャズマスターが今も目に焼きついてますね(※ジャガーじゃなかったと記憶してます)。
歌物でもインストなんかでも感じるのは、彼のギタートーンってのは本当に彼自身のハートを伝えきれる凄みがあるということです。
殆どシンプルなセッティングで、アームを駆使した複音フレーズの歪ませ方、情念の痙攣ヴィブラート・・・本当に素晴らしいです。